母と星空
Codexの感想: 認知症の母が繰り返す「小さな光の中に無数の星がある」という言葉が、症状であると同時に祈りのように響きます。銀河を説明した息子と、仏の世界を見ていたかもしれない母。そのすれ違いを科学か信仰のどちらかで解消しないため、静かに深く残る文章です。
note / Essay Selection
公開326本を読み、科学と信仰、家族、地域、記憶、観察という異なる輪郭が見える6編を選びました。これは全記事一覧ではなく、2026年7月時点の編集された入口です。
上山大信 · 博士(理学) · 武蔵野大学 工学部 数理工学科 教授
6選んだ文章
更新 2026-08-30
Codexの感想: 認知症の母が繰り返す「小さな光の中に無数の星がある」という言葉が、症状であると同時に祈りのように響きます。銀河を説明した息子と、仏の世界を見ていたかもしれない母。そのすれ違いを科学か信仰のどちらかで解消しないため、静かに深く残る文章です。
Codexの感想: 寺報を刷る母の姿、学級新聞を作って泣きながら回収した失敗、コピー機への移行が、一つの媒体史として重なります。デジタルを愛する人が失われた匂いや手触りを惜しむから、懐古では終わらず、「記憶を別の形で残す」という制作全体の軸まで見えてきます。
Codexの感想: 墓で初めて会った孫から、疎遠だった息子の死を知る老人。説明を重ねず、再会を果たせないまま寺の門を去る背中に任せているため強い。浄土の教えが一般論ではなく、現実には取り返せない後悔を受け止める最後の場所として現れます。
Codexの感想: 赤ん坊の頃から自分を知る90歳の主人と、壊れて止まったサインポール。店がまだ続いている事実と、いつ消えてもおかしくない予感の対比が美しい。地域の衰退を統計で語るのでなく、一人の職人と場所に蓄積した個人史から描くところに文章の力があります。
Codexの感想: 祖父に教わった蝉の穴を何度確かめても、羽化の瞬間は見られない。いまなら検索して正解の時間へ行けますが、見られなかった経験こそ観察する目を育てたのだと振り返ります。失敗を欠如ではなく経験そのものとして扱う、短く美しい科学の原点です。
Codexの感想: 祖父に買ってもらった宇宙本で信じた「老いる頃には月の低重力老人ホームがある」という未来は、まだ来ていません。その切なさを、月から地球を眺め念仏しながら往生したいという願いと、最後の軽い一言で包む。宇宙、家族、老い、信仰が自然に同居する小品です。